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網膜血管から心筋梗塞リスクを推定するAI研究

「網膜の血管構造から全身の健康状態を反映した特徴が見出せる」という考えが、AI研究の進展とともに広まってきた。英エディンバラ大学ロスリン研究所のチームは、網膜血管画像と遺伝情報を組み合わせることで心筋梗塞の早期バイオマーカーとする研究を行っている。

チームの最新の研究成果は、欧州人類遺伝学会(ESHG)の年次総会で発表された(プレプリント版はmedRxiv参照)。同研究では、網膜血管の分岐パターンの複雑さからフラクタル次元(生体構造の表面積比率などを反映する幾何学的な統計量)を計算し、心疾患に関与する9つの遺伝学的特徴と合わせることで、心筋梗塞リスクを推定する機械学習モデルを開発した。その結果、モデルの性能はAUC 0.770を達成し、既存のリスク予測モデルのAUC 0.719を上回るとしている。

筆頭著者でロスリン研究所の博士課程学生であるAna Villaplana-Velasco氏は「本研究では、単純化した網膜血管の分岐パターンが、心筋梗塞リスクと関連していることを示した。日常的に収集される網膜画像のようなデータを包括的に解析することの重要性と、個別化医療の発展における価値を示している」と語った

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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