心臓疾患と老化の関係は長らく注目されてきたが、この関連には個人差がみられることが知られている。英Imperial College Londonなどの研究グループは、MRIと心電図データにAIツールを組み合わせることで、「心臓年齢」をより精密に予測する手法を構築し、心臓の老化プロセスに関与する遺伝子を特定する試みを進めている。
Nature Communicationsに発表された同研究では、大規模データベースのUK Biobankから収集した約4万人のデータに基づき、「心臓の形態学的特性」「心臓の動き」「電気伝導特性」などといった要素を老化のバイオマーカーとして計量分析した。機械学習手法を用いることで、心臓の老化に最も影響を与える因子が「高血圧」であることが確認され、加えて「喫煙」「糖尿病」「肥満」が老化を加速させる要因として明らかになった。さらに、心臓組織の修復能力や、その若さを維持する「速度」に影響を与える遺伝子変異も特定した。
研究グループは、この新しいアプローチを用い、喫煙や肥満といった既知のリスク因子を再評価するだけでなく、心臓年齢に影響を及ぼす未知の環境リスク特定にも期待している。研究を主導したDeclan O’Regan教授は、「我々のグループは、心臓スキャンデータから心臓年齢の予測を可能とするAI技術を開発した。この研究の成果は、心臓の老化を遅らせる治療法の優先順位付けにも貢献する可能性がある」と語っている。
参照論文:
Environmental and genetic predictors of human cardiovascular ageing
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