医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例機械学習による肺塞栓症の予測

機械学習による肺塞栓症の予測

肺塞栓症(PE)は、迅速な診断と治療が求められる致命的な疾患であるが、多彩な臨床像を呈するため診断の見逃しや誤診、治療介入の遅れにつながることがある。中国の研究チームは、機械学習アルゴリズム(MLA)を構築し、その予測能力を検証した結果を、2025年1月4日、Scientific Reports公表した

2015年から2020年の間に入院したPE疑いの患者1480人が後ろ向きに解析された。研究チームは、患者属性や画像を含む各種検査結果から、Lassoモデルと多変量ロジスティック回帰を用いて特に重要なPE予測因子を特定し(Dダイマー、APTT、FFDP、血小板数、アルブミン、コレステロール、ナトリウム)、これらを入力変数として複数のMLAモデルを構築した。ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、多層パーセプトロンなどのMLAを構築・評価した結果、ランダムフォレストが最も高い予測精度を示した(AUC=0.776)。さらに、SHAP解析により、各変数が予測に与える具体的な影響を可視化し、これらの結果をもとにPEリスク評価のためのオンラインツールを開発した。

筆者らは、「ウェルズ基準やジュネーブスコアなどの従来のPE予測スコアリングと異なり、MLAによる予測では、臨床医が個々の患者ごとにデータを検討する必要がなく、患者集団を幅広く一度にスクリーニングすることができる」と述べている。さらに今後は、非血栓性PEについて、原因に応じたPE予測モデルの構築を目指す、と意欲をみせている。

参照論文:
Prediction of pulmonary embolism by an explainable machine learning approach in the real world

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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