医療従事者のAIに対する認識:横断的調査

オーストラリアのクイーンズランド州において、「医療従事者のAIに対する認識と、医療現場におけるAI使用の機会や課題」について、横断的調査が行われた。

本調査は、231名の医療従事者を対象に行われ、医療従事者のAIの認識に関する調査を目的に開発されたShinners Artificial Intelligence Perception toolが用いられた。参加者の大半は40歳未満(67.9%)であり、平均勤務経験年数は10年であった。大半はAIの使用経験がなく(80.1%)、医療にAIを導入する上での課題に、「知識不足」が挙げられた。また、大半が「AI実用化に対する準備ができていない」と感じており、AIにより重要なタスクが奪われることを懸念していた。ほとんどの参加者はAIに関する教育を受けていないが(82.3%)、トレーニングを希望しており(73.6%)、AIが医療を改善すると回答した。薬剤師が、「AIの導入が実務に影響を与える」と考える傾向が最も強く、理学療法士とソーシャルワーカーが考えにくいとする傾向がみられた。AI活用の機会に関する自由記述の回答では、勤務表作成、患者モニタリング、投薬管理、職場におけるトレーニングや患者教育、職場のワークフローの作成・効率化などが挙げられた。

筆者らは「AIにより受けられる恩恵は、デジタルリテラシーの高い職種に限定されるべきではない」としており、職場トレーニングなどにおけるAI教育の重要性を強調した。また、医療においてAIを有効に利用する機会について検討するために、AI業界の専門家との協力の必要性も指摘した。

参照論文:

Allied Health Professionals’ Perceptions of Artificial Intelligence in the Clinical Setting: Cross-Sectional Survey

関連論文:

  1. AIに対する放射線技師の理解度調査
  2. ネパールの医学生における「AIへの意識」
  3. 世界の精神科医たちは医療AIを強く疑っている? – SERMOの国際意識調査から
  4. AI医療利用の世界ランキング – 日本は調査対象外

Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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