菌血症には迅速な診断と治療が求められるが、血液培養検査の結果には1-2日を要し、また皮膚常在菌の混入による偽陽性もありうるため、より早期に確定診断を得るための手法が模索されている。これに対し、英インペリアルカレッジロンドンの研究チームは、深層学習を用いて、入院患者の日々の血液データから菌血症状態を高精度に予測可能だと発表した。
The Lancet Digital Healthに掲載された本研究では、菌血症疑いで血液培養検査を受けた20,850人のデータを用いた。患者の年齢、性別、血液バイオマーカーのデータを、血液培養検体採取前の最大14日間までレトロスペクティブに収集し、モデルの学習を行った。LSTMモデル(時系列モデル)および静的ロジスティック回帰モデルに学習を行い、血液培養が陽性となるか否かを予測させたところ、総じてLSTMモデルの精度が良く、テストデータでAUROCが0.97、AUPRCが0.65という結果を得た。また時系列情報を除くとモデル性能は低下し、特にCRP・好酸球数・血小板数の変動が重要な指標であることが明らかとなった。
研究チームは「本研究のようなモデルを用いて菌血症リスクの層別化を行うことで、血液培養をより適切に確信を持って実施できるようになり、抗菌薬の不適切使用の抑制にも繋がるだろう」と述べている。今後は、菌血症予測モデルの臨床的有用性、費用対効果などを前向き研究で検証することが期待される。入院患者の日常的な臨床データの活用法についても、より一層の発展が望まれる。
参照論文:
Utilising routinely collected clinical data through time series deep learning to improve identification of bacterial bloodstream infections: a retrospective cohort study
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