口唇口蓋裂や小顎症をはじめとする「胎児の顔面奇形」を早期に検出することは、基礎疾患の特定や染色体検査などの迅速な医療介入につながる。現在、胎児異常の検出には超音波検査が広く用いられているが、解像度や検査技師の技術に起因する誤診が発生することがあり、この課題を克服するためにAI技術が貢献する可能性がある。インドの研究チームは、AIを用いた胎児顔面奇形の検出に関する既存文献についてシステマティックレビューを行い、その結果をArtificial Intelligence Reviewに発表した。
過去15年間の文献を対象に、PubMed、IEEE、Xploreなどのデータベースから、胎児顔面奇形のAI診断に関する文献が検索された。顔面奇形の画像解析において最も広く使用されているモデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であり、詳細な顔面構造や欠損を特定し、正確な診断に寄与した。また、U-Netはセグメンテーション技術として優れており、顔面奇形の局在化や形状の識別に効果的だった。さらに、敵対的生成ネットワーク(GANs)を用いることで、合成画像を生成し、データ不足の問題を補完するアプローチも試みられた。加えて、リカレントニューラルネットワーク(RNN)を活用した研究では、胎児の顔面構造の経時的変化を追跡し、奇形の進行を解析する可能性が示唆されている。
研究チームは「臨床現場における顔面奇形のAI診断を可能とすることで、家族に対し早期に精神的サポートや関連知識の提供、さらには適切な出生前治療や出産計画の策定が可能になる」と述べている。今後は、AIによる画像診断に加え、超音波検査、遺伝子検査、病歴など複数の要素を統合することで、さらに優れた精度の診断が期待される。
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