医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIを応用した体外受精における男性不妊マネジメント:システマティックレビュー

AIを応用した体外受精における男性不妊マネジメント:システマティックレビュー

不妊症において、男性不妊は不妊症症例の20%から30%を占めている。精液検査は基本的な男性不妊の検査であるが、主観に基づく手動による評価方法であり、体外受精(IVF)の結果を正確かつ効率的に予測することが困難である。このような課題を踏まえ、イランの研究チームは体外受精における男性不妊のマネジメントに関するAIのレビューを行い、その成果をEuropean Journal of Medical Research発表した。

研究チームは、2024年までに発表された研究について、「IVF」、「AI」、「精液検査」などのキーワードを用いて、Pubmed、Scopus、IEEE、Web of Scienceで文献検索を行い、14件の研究を分析対象とした。研究の約60%が2021年以降に発表されたものだった。AIモデルとしては、サポートベクターマシン、多層パーセプトロン、勾配ブースティング決定木、ランダムフォレストなどが採用されており、これらは精子の濃度や運動率に基づく分類(AUC88.59%)、体外受精の成功予測(AUC84.23%)、非閉塞性無精子症における精子採取の成功率(AUC80.7%)、精子DNA断片化の評価、精巣静脈瘤の診断および分類の評価などに利用されていた。

本レビューは、AIにより精液検査の評価や体外受精の結果予測が最適化される可能性を示した。研究者たちは、「精液検査は手動で行うため、評価者間で結果にばらつきが生じやすい。しかし、AIを導入することで検査結果の再現性が保たれ、客観的な評価が可能となる。AIの実用化には、データ収集のための標準化されたプロトコールの策定が必要である」と述べている。

参照論文:
Artificial intelligence (AI) approaches to male infertility in IVF: a mapping review

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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