医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例2型糖尿病における冠動脈疾患の有無を予測するAI

2型糖尿病における冠動脈疾患の有無を予測するAI

2型糖尿病(T2DM)は、冠動脈疾患(CHD)の主要なリスク因子であることが知られており、その同定は重要である。CHDの診断には冠動脈造影(CAG)が広く用いられるが、カテーテルを血管内に挿入し、造影剤を用いて冠動脈を映し出すため、侵襲的な手法である。中国重慶医科大学の研究チームは、T2DM患者におけるCHDを予測する機械学習モデルを開発し、その成果をFrontiers発表した。

研究チームによると、中国重慶医科大学の医療データプラットフォームからCAGを受けたT2DM患者のデータをレトロスペクティブに収集し、2,517名を解析の対象とした(T2DM+CHD群1,943名、T2DM単独群574名)。5つの機械学習モデルが比較され、その結果、RFE(再帰的特徴量削減)+LightGBMで特徴量選択を行ったXGBoostが最も優れたパフォーマンスを示した(AUC:0.814、正解率:0.799、適合率:0.841、再現率:0.920、F1スコア:0.879)。SHapley Additive exPlanations分析では、年齢、高血圧、喫煙の有無、HbA1c、血糖値、総タンパク、クレアチニン、AST、HDL-コレステロール、リポタンパク(a)、アポリポプロテインA-1、フィブリノーゲン、アルブミンの13の特徴量が重要因子として特定された。

今回の研究により、本機械学習モデルを用いることで、容易にアクセスできる臨床データからT2DM患者におけるCHDを特定できる可能性が示唆されている。したがって、本モデルは、特にプライマリケアなどでCHDを容易に同定できない場面において役立つ可能性がある。筆者らは、「時間経過を考慮した予測精度を評価するためには、縦断的な前向き研究によるフォローアップが必要である」と述べている。

参照論文:
Machine learning-based coronary heart disease diagnosis model for type 2 diabetes patients

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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