医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例外耳道分泌物からパーキンソン病を予測するAI

外耳道分泌物からパーキンソン病を予測するAI

パーキンソン病(PD)は高齢者に多く見られる進行性の神経変性疾患で、現在の診断基準(MDS-UPDRSや各種画像診断)は「主観的評価」や「高コスト・長時間」を伴い、早期発見・介入には不向きとされる。中国の研究チームは、より簡便かつ低コストにPDのバイオマーカーを検出する手法として、外耳道分泌物(ECS)中の揮発性有機化合物(VOC)に着目し、VOCのプロファイルを解析することで、非侵襲的・迅速にPDをスクリーニングできる可能性を示し、その成果をAnalytical Chemistyにて発表した。

まずECS試料を調べ、PD患者と健常者で有意差を示した14種のVOCのうち、エチルベンゼン、4-エチルトルエン、ペンタナール、2-ペンタデシル-1,3-ジオキソランの4成分を最終的なバイオマーカー候補とした。これらを入力特徴量とした機械学習モデル(サポートベクターマシン)が約84.3%の精度でPDの有無を正確に識別した。その後、4成分のクロマトグラフィーから得られる時系列情報を計測、それを2Dマトリクス化(2次元データ化)し、畳み込みニューラルネットワークで学習させる「AIOシステム」を構築。クロマトグラフ情報を活かすことで、検査時間やコストを抑えつつ、94.4%の正答率かつAUC0.98の識別性能を実現した。

本研究は、環境変動の少ない外耳道分泌物を用いることで、皮膚表面にくらべてサンプルの安定性を確保できる点を示した。著者は「今後は、ECS採取プロトコルの標準化や被験者層の拡充、疾患ステージ別の多クラス分類モデルの開発を進め、臨床導入を目指している」と述べた。また、小型化・簡易化したAIOデバイス化により、外来や在宅での早期スクリーニングツールとして、PD患者の生活の質向上に貢献することが期待されている。

参照論文:

An Artificial Intelligence Olfactory-Based Diagnostic Model for Parkinson’s Disease Using Volatile Organic Compounds from Ear Canal Secretions

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1.片寄駿 旭川医科大学医学部卒(MD)、Columbia University研究員、Accenture, LPIXELにて機械学習エンジニア、医療AIスタートアップ経営など。
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