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創薬におけるAIの応用:システマティックレビュー

創薬には膨大な時間と労力、多額の費用がかかるため、AIの応用が期待される分野である。さらに、創薬に関する基礎研究から臨床応用への橋渡しにおいても、AIが果たす役割がある可能性がある。研究チームは、創薬におけるAI応用の現状を整理することを目的としてシステマティックレビューを実施した。

8月29日にDrug Design, Development and Therapyに発表された論文によると、研究チームはPubMedなどのデータベースを用いて、「AI」「新薬発見」「機械学習」「トランスレーショナルメディシン」「臨床試験」などのキーワードで、2014年から2024年の間に公表された創薬に関する論文を検索した。新薬の発見におけるAIの応用例としては、分子モデリングや医薬品設計、バーチャルスクリーニングが挙げられ、開発段階ではドラッグリポジショニング、前臨床試験、臨床試験においてAIが活用されていた。基礎研究から臨床応用にかけては、患者のゲノム配列から最適ながん治療を特定するなど、オーダーメイド医療にAIが役立てられていた。具体的には、AlphaFold社によるタンパク質立体構造の予測、BenevolentAI社による既存薬のCOVID-19 へのリポジショニング、Insilico Medicine社による特発性肺線維症の候補薬の設計、Atomwise社によるエボラの候補薬を1日未満で抽出した例などが挙げられた。

今回のレビューにより、AIが新薬の発見・開発において、コスト削減や時間短縮、さらには薬剤の有効性や毒性の予測に役立つことが示された。一方で、データの品質管理、モデルの解釈可能性、倫理やプライバシー保護に関する規制など、考慮すべき課題も存在する。研究者らは「創薬におけるAIの恩恵を患者に届けるためには、研究者と実務家が協力し続けることが不可欠である」と述べている。

参照論文:

Transformative Role of Artificial Intelligence in Drug Discovery and Translational Medicine: Innovations, Challenges, and Future Prospects

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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