医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例病変セグメンテーションのための大規模皮膚病理データセット

病変セグメンテーションのための大規模皮膚病理データセット

皮膚がんの発生は、高齢化と日光曝露の増加により、世界的に増加傾向にある。診断には病理学的評価が重要であるが、病理医の負担増加による診断エラーを防ぐためにAIの活用が期待されている。韓国の研究チームは、大規模な皮膚病理データセットを構築し、AIモデルをトレーニングしてその精度を評価した。研究成果は9月8日付でJournal of Korean Medical Scienceに公表された。

データセットは、韓国内の4つの施設から収集された34,376件の病理デジタル画像をもとに構築された。研究チームは、ImageNetで事前学習されたResNet50を用い、全スライド画像から抽出したパッチ(切り出し画像)を使ってトレーニングを行った。パフォーマンスはダイス係数で評価され、表皮嚢胞が最高値の90.1%を記録し、ボーエン病および扁平上皮癌が最も低い82%であった。これは、臨床的にボーエン病と高分化扁平上皮癌の鑑別が時に困難であることと一致している。その他、脂漏性角化症は89.9%、基底細胞癌は88.9%、色素細胞母斑は84.3%、悪性黒色腫は87.4%と、いずれも高いダイス係数を示した。

今回の研究では、多施設から収集された皮膚病理の大規模データセットが深層学習のトレーニングにおいて優れた資源となり、モデルの性能向上に寄与する可能性が示された。研究者らは「本研究はアジア人のみを対象としており、人種の多様性に欠けているため、将来的にはThe Cancer Genome Atlasなどの公開されている外部データを用いてさらなる検証が必要である」と述べている。

参照論文:

Large-Scale Dermatopathology Dataset for Lesion Segmentation: Model Development and Analysis

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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