公衆衛生分野において、感染症のモニタリングやアウトブレイク対応のためのデータ収集・解析は煩雑であり、特にリソースが限られた地域では迅速な判断が困難である。この課題に対して、カナダのヨーク大学ダダレ・グローバルヘルス研究所は、感染症対策の効率化を目指し、AIを活用した国際ネットワーク「AI4PEP(Artificial Intelligence for Pandemic and Epidemic Preparedness and Response)」を発表、その成果を報告した。
本プロジェクトでは、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなど複数の地域拠点において、AIを活用したリアルタイムモニタリングおよび早期警戒システムを導入した。例えば、エチオピアでは「Polio Antenna」と呼ばれるAIアプリの導入により、従来はサンプル採取から検査・報告まで数日を要していたポリオ疑い症例を、より迅速に検知できるようになった。また、南アメリカではAIセンサーで大気汚染を検知し気候×医療データを統合し、呼吸器疾患のリアルタイム監視に活用している。このように、グローバルサウスの20の研究ハブで、地域ごとの文化や生活習慣に合わせたAIモデルを設計し、現地の保健師やコミュニティと協働することでデータの正確性と実行可能性を向上させている。
研究チームは「AIモデルを地域の公衆衛生活動に組み込むことで、従来の手動による監視・解析から効率的かつ標準化された対応が実現した」と述べている。今後は各国政府や保健機関との連携を強化、研究成果の政策実装、そしてグローバルサウスにおけるAIリテラシーを備えた公衆衛生人材育成を推進などが計画されている。
参照論文:
York researchers lead AI initiative to change future of global health
関連記事:




















