医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例FDA承認AI医療機器の現状と課題を分析

FDA承認AI医療機器の現状と課題を分析

AIおよび機械学習(ML)を活用した医療機器は、がんや心血管疾患、神経領域などの診断や管理において急速に導入が進んでいる。しかし、承認された多くの機器では、有効性や安全性、リスクに関する報告が十分でなく、臨床現場での判断を困難にしている。こうした背景を踏まえ、米国の研究チームは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)により承認された691件のAI/ML医療機器を対象に、承認文書や市販後の有害事象・リコール情報を横断的に分析し、その成果をJAMA Health Forum発表した。

研究チームによると、1995年から2023年にかけてFDAが承認した691件のAI/ML医療機器のうち、全てのAI/ML機器がクラスII(中等度リスク)であり、承認経路は510(k)が668件(96.7%)と大部分を占め、対象分野としては放射線科が約8割を占めていた。また、試験デザインに関する報告が欠落していたのは323件、試験が実施された施設数に関する報告が欠落していたのは564件、サンプルサイズに関する報告が欠落していたのは368件、人口統計情報に関する報告が欠落していたのは660件であった。ランダム化臨床試験は6件、前向き試験は53件のみであった。査読付き論文で性能が報告されていた機器は272件、患者転帰の報告は3件未満であった。市販後には36機器で合計489件の有害事象が報告され、そのうち誤作動が458件、傷害が30件、死亡が1件含まれていた。

研究チームは、「FDA承認件数が増加している一方で、有効性・安全性・リスクに関する標準化された報告は依然として不足している」と述べている。また、多くのAI/ML医療機器が、厳格なPMAではなく、既存機器との「実質同等性」を前提とする510(k)で承認されている点は、リスク評価の妥当性という観点から議論を呼びそうだ。

参照論文:

Benefit-Risk Reporting for FDA-Cleared Artificial Intelligence −Enabled Medical Devices

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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