医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AI解析で浮かび上がるCOVID-19・インフルエンザ・RSVの免疫応答の違い

AI解析で浮かび上がるCOVID-19・インフルエンザ・RSVの免疫応答の違い

COVID-19はRSウイルスやインフルエンザウイルスと同様に急性呼吸器感染症を引き起こすが、宿主の免疫応答には共通点とウイルス特異的な差異が存在する。従来の遺伝子、転写産物、タンパク質の個別解析では、異なるウイルス間の応答の違いを包括的に把握することは困難であった。こうした課題を背景に、中国の研究チームはゲノムワイド関連解析(GWAS)と多層オミクスデータを統合し、RSウイルス、インフルエンザウイルス、COVID-19における宿主応答の共通性と特異性を解析するモデルを開発し、その成果をnpj Digital Medicineに報告した。

研究では、COVID-19 Host Genetics Initiativeの大規模遺伝学データと多層オミクスデータを用いて勾配ブースティングモデルを構築し、SHAP解析により各遺伝子・タンパク質・経路の寄与度を評価した。その結果、I型インターフェロン経路が3種類のウイルスに共通する抗ウイルス応答として確認された。一方、COVID-19では凝固異常や血管内皮機能障害、AP-1/MAPK経路の活性化が特異的に高い寄与を示した。インフルエンザではT細胞関連経路、RSウイルスでは好中球を中心とした炎症経路が主要な特徴量として特定された。さらに、高いIL-6シグナルと低いT細胞応答が同時に存在する状態が、単一指標よりもCOVID-19を特徴づける免疫パターンであることが示された。

研究チームは「このマルチオミクス統合と説明可能なAIの枠組みは、ウイルス感染における宿主応答の理解を深める基盤となる」と指摘している。今回の知見は、IL-6阻害薬やMAPK阻害薬などの標的治療の開発に資する可能性があり、また、I型インターフェロン応答を強化することで、広範な呼吸器ウイルスに対応する抗ウイルス戦略の検討にもつながる可能性がある。

参照文献:

Explainable AI multiomics analysis reveals shared and divergent host responses in COVID-19 and influenza

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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