ハーバード大学は1976年以降、看護師を主な対象として女性の健康に関する世界で最大かつ最長の研究を主導してきた。骨粗鬆症の予防にホルモン補充療法が有効であることなどを証明してきたその大規模研究には、のべ275,000人以上の参加者が登録された。2019年11月、ハーバード大学はさらに野心的な計画として、Appleと共同で取り組み10年で100万人の女性を登録する次世代の研究Apple Women’s Health Studyを発表している。本年6月にWWDC 2019で発表した計画を実行に移したかたちとなる(過去記事)。
The New York Timesの報道によると、Apple Women’s Health Studyに参加した女性は月経周期・妊娠・更年期障害など健康に関する定性的な情報を提供できる。また調査用アプリを通じて、iPhoneやApple Watchから収集したフィットネス・心拍数など定量的データを自動同期して提供もできる。ハーバード大学 T.H.Chan School(公衆衛生大学院)の学部長Michelle A. Williams氏は「現在使用している女性の健康に関する多くの臨床意思決定や診断のプロトコルは社会環境が異なっていた50年前からのデータに由来します。かつてない方法で女性の月経周期情報を収集できることに興奮しています」と語った。
ハーバード大学が取り組むApple Women’s Health Studyは、Appleの新しい3つの大規模研究の1つにすぎない。Appleという世界最大のハイテク企業は医学研究のあり方を再定義しようとしている。「Apple Hearing Study」はミシガン大学と共同で、ヘッドフォンとiPhoneアプリから騒音レベルのデータを収集し、長期の騒音曝露が聴覚に与える影響を調べる。また「Apple Heart and Movement Study」はボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院と共同で、Apple Watchにより身体活動と心臓データを収集して心臓の機能低下を早期警告する兆候を特定しようとしている。人々の生活とコミュニケーションのあり方を変容させたAppleが、健康を通じて社会に影響を与えようとしていることに、これからも多くの懸念と期待が集まるだろう。