神経変性疾患であるパーキンソン病に対するAIの活用事例を以前にも紹介してきた(過去記事)。パーキンソン病の中核的な症状である手足の震え(振戦:tremor)、および治療中の副作用である制御不能の不随意運動(ジスキネジア:dyskinesia)をApple WatchあるいはiPhoneなどのデバイスで検出・監視する特許をアップルは取得している。
アップル関連の大手ニュースサイトappleinsiderでは、2019年12月5日に公開された上記の特許を紹介している。2018年6月にwatchOS 5が発表された段階で既にApple WatchにはMovement Disorder APIとしてその検知機能が組み込まれ開発中であった。当時に申請されていた特許がようやく公開された次第である。
パーキンソン病の他の症状が薬物治療でうまく管理されているときに振戦症状は発生しやすいとして、検知の有効性をAppleの特許は主張している。また、パーキンソン病治療のドーパミン補充療法では、経過とともに治療効果が低下して副作用のジスキネジアが目立つようになる。これらの症状をデバイスのモーションセンサーが検知・監視し、パーキンソン病評価尺度:UPDRSに基づきデータ分析することは、患者と臨床医の双方へのメリットを秘めている。
患者は自身の症状を主観的に事後報告し、臨床医は患者の訴えと受診時に観察できる症状から薬を調整する。それが診断と治療の古典的な流れであったが、リアルタイムで起きていない症状への信頼性は確保しにくかった。Appleが今回の特許で提案する、ウェアラブルデバイスによるパーキンソン病の症状のトラッキングは、従来の医療の流れに新たな変革を起こすかもしれない。