どのような患者で新型コロナウイルス感染症が重症化するか。議論と研究が進められている。初期の患者における因子、肺の画像パターン・発熱・強い免疫反応・年齢・性別などが候補として挙げられている。ニューヨーク大学(NYU)が主導し、中国Wenzhou Central HospitalとCangnan People’s Hospitalと共同開発したAIツールでは、それら前述の重症化予測因子とは異なる3つの因子が導かれている。研究成果は3月30日にComputers, Materials & Continua誌にオンラインで発表された。
ScienceDailyでも同研究を紹介している。ここでの重症化は急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症と定義された。アルゴリズムが示したCOVID-19の重症化予測因子は、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼALT値の上昇・筋肉痛の存在・赤血球ヘモグロビン値の上昇という3つであった。従来予想されていた他の因子は同研究では有意なものとならなかった。ALTは感染が肝臓に与えた炎症、筋肉痛は全身の炎症、ヘモグロビン値は喫煙などを反映した可能性がある。2つの病院の患者53名で学習された同アルゴリズムは70-80%の精度で重症化予測を達成した。
研究グループによると、ツールを開発する目的として「どのような中等症の患者が本当にベッドを必要としているのか」、「医療リソースが不足している中でどの患者を帰宅させるのか」、現場の意思決定を補助することを期待している。研究の限界点として、比較的少ない人数での学習であること、患者の平均年齢が43歳で高齢者の数が少なかったことを著者らは挙げている。おそらくこれからも重症化予測因子をめぐる多くの研究が追従し総意が得られていくであろう。次第に明らかになってくる因子に注目しながら臨床医達の戦いは続いてゆく。