自殺を企図した患者に最初に接するのは多くの場合で救急隊員である。そこで記録される救急隊の臨床データは、自殺対策に取り組む上で貴重なソースとなりうる。それらデータにAIを活用した研究を行うモナシュ大学のグループは、2019年のGoogle AI Impact Challengeにおいてオーストラリアで唯一選出され助成を受けている。
モナシュ大学のニュースリリースによると、同研究グループでは自殺関連の救急隊における臨床記録とそれに関連した精神疾患の情報を、機械学習技術で分類するプロジェクトを展開している。メルボルン最大の医療サービスEastern Healthと共同して収集された大規模なデータに、自殺未遂・希死念慮・自殺意図のない自傷行為、など機械的に注釈をつけ分類することをAIプロジェクトは可能にする。データ分類の精度向上で、自傷例が関連した行動や関係性の要因(暴力・薬物使用・経済的状態)などを専門家らが詳細に解釈できるようになる。
従来このアノテーション作業は人の手によって行われてきた。しかし、プロジェクトの成果によって今後はデータ処理の3分の2が不要となり作業量は30%以上の削減を見込むという。また、スタッフが心的負担の強い露骨な臨床情報に接する機会も軽減できる。今後、同プロジェクトはGoogleからの資金とAI技術サポートを受け、自殺監視システムの改善へ前進してゆく。自殺対策は世界共通の課題であり、プロジェクトから予防対策の国際基準が生まれてゆくことも期待されている。