関節リウマチ治療薬の「Baricitinib: バリシチニブ(製品名オルミエント)」が、AI手法により新型コロナウイルス感染症の治療薬候補に挙げられていたことは以前に紹介した(過去記事)。このAIの予測を実証するものとして、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンとスウェーデンのカロリンスカ研究所のグループによる「バリシチニブがCOVID-19の罹患率と死亡率を低下させる」可能性を示した研究成果が学術誌 Science Advancesに発表された。
インペリアル・カレッジ・ロンドンのニュースリリースによると、同研究では「オルガノイド」と呼ばれる幹細胞の培養で形成されたミニチュア臓器によって肝臓の環境が再現され、バリシチニブのCOVID-19に対する効果が調べられた。結果、バリシチニブが炎症による臓器損傷を軽減し、ウイルスがヒト細胞内に侵入するのをブロックする作用機序が明らかになった。またCOVID-19が血小板の遺伝子活性を増加させ血栓を形成させることに対して、バリシチニブがその活性を低下させることも示された。これらのプロセスでバリシチニブ投与がCOVID-19からの生存率を上昇させていることが同研究から示唆されている。
共同執筆者であるカロリンスカ研究所のVolker Lauschke教授は「この研究はAIが予測していたことや、投与患者の症例報告から得られていた情報を確認するものです。バリシチニブが細胞レベルでどのように私たちをCOVID-19から守ってくれるのかに光を当てています。この手法は他のタイプの薬についても有益かそうでないかを理解し、COVID-19の治療法を特定することに役立つでしょう」と語った。