COVID-19ワクチンの開発・普及へ世界的な取り組みが急速に進み、期待が高まっている。一方でワクチンの話題をめぐってはSNS上などで懐疑論者の言説が強くみられる。集団免疫という目標の達成には社会全体の信頼を醸成することが欠かせない。それら課題の解決策として「AIアプローチでCOVID-19ワクチン接種に関するTwitterとFacebookの投稿を解析し、人々の感情と世論を分析する研究」が行われている。
同研究は、英国エディンバラ・ネピア大学の研究者らによる論文が査読前のプレプリントとしてmedRxivに掲載されている。2020年3月から11月までの間にCOVID-19ワクチン接種に関するFacebook投稿(英2.3万件・米14.4万件)とツイート(英4.0万件・米9.8万件)が自然言語処理とディープラーニングベースの技術で解析された。投稿の感情をポジティブ・ネガティブ・ニュートラルに分類すると、英国で58%・22%・17%、米国で56%・24%・18%であった。同研究結果を英米両国で行われた別の全国調査と比較したところ、有意な相関関係を示したという。投稿内容の傾向としては、ワクチンの開発と有効性に関する楽観的な見方の一方、安全性と経済性および企業の管理に対する懸念が確認されている。
AIを利用したSNS分析は、大衆におけるワクチンに対する信頼のリアルタイム評価を可能とし、ワクチン接種の効率を最大化するための効果的な政策と戦略に役立つ、と著者らは主張している。従来の国民調査はサンプル数が小さく、いわゆるクローズド・クエスチョン中心で、時間と地理的な限界があった。その限界を克服するために精度の高いAIベースのSNS解析を導入することは、政府および関係当局にとって今後ますます検討すべき手法となるだろう。