全身麻酔時、麻酔科医は臨床経験に基づき、患者の心拍・呼吸・動作などからその意識状態を推測している。MITのグループから発表された「プロポフォールによる麻酔深度を管理するディープラーニング手法」を以前に紹介した(過去記事)。当時、仮想環境で施行されていた研究を発展させ、「実際の手術患者で麻酔薬の種類に応じて意識状態を評価するアルゴリズム」として公表された。
MITの研究所 The Picower Instituteからのニュースリリースでは、PLOS ONEに掲載された「脳波の機械学習によるGABA作動性麻酔時の無意識状態の分類」という同グループの成果を紹介している。研究チームは健康なボランティア7名にプロポフォール麻酔を導入し、リアルタイムに脳波から意識状態を分類するAIアルゴリズムを構築した。これを別の3名で交差検証したところ、AUC 0.99という優れた性能を示していた。さらに「背景の全く異なる27名」を実際の手術患者から抽出してモデルをテストしたところ、AUC 0.95-0.98を達成し、高い汎化性能が確認された。また、プロポフォール同様、GABA受容体への神経メカニズムで作用する麻酔薬セボフルランを投与された17名の患者においても、意識分類におけるモデルパフォーマンスとしてAUC 0.88-0.92が得られている。
同モデルにより、脳波からの無意識状態の予測が、同じ作用機序をもつ複数の麻酔薬で汎用できる可能性が示された。そして、20代の若者を中心とした学習データから構築されたアルゴリズムが、背景のばらついた平均年齢の高い手術患者でもうまく適用されている。著者のひとりBrown氏は「さらに数百のケースに臨床試験を拡大してアルゴリズムの性能を確認し、より幅広い違いが現れるか見極めたい」とする。この研究アプローチは、適切な麻酔深度を自動制御する輸液ポンプのような装置開発へつながることも期待されている。
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