レーザー光による画像検査技術「光音響イメージング」の発展について以前に紹介した(過去記事)。従来ではセンサーを組織表面に押し当てて光音響の画像情報を得ていたものを、非接触のリモートセンサーで画像構成できる「PARS: photoacoustic remote sensing(光音響リモートセンシング)」と呼ばれる新システムの実用化が近年進んでいる。
カナダ・ウォータールー大学のニュースリリースによると、同大学のグループは、PARSの非接触という利点を活かし、機器を接触させることなく眼球組織を画像化することで、酸素飽和度や酸素代謝といった機能的情報が得られるという研究成果をScientific Reports誌に発表した。同システムによって、加齢黄斑変性症・糖尿病性網膜症・緑内障といった失明原因となる疾患についての早期診断、特に症状が出現するよりも早い段階での検出実現が期待されている。
非接触検査は患者の不快感軽減のみならず、感染リスクの低減にも貢献できるため、近年普及が進む注目の領域となっている。研究グループでは「PARS技術は眼科画像検査における現在のゴールドスタンダードを超える可能性を秘めている」と考え、2年以内の臨床試験開始を検討している。同システムは、乳がん・消化器がん・皮膚がんなどの組織への適用や、脳腫瘍の切除時に外科医をガイドするリアルタイムイメージングへの応用も既に始められており、そちらの続報も待たれる。
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