睡眠時に歯をすり合わせたり噛みしめたりする無意識の運動は、ブラキシズム(Bruxism)と呼ばれる。いわゆる「歯ぎしり」として認識されることが多いが、睡眠時無呼吸や不眠症などの患者にも頻繁にみられる。睡眠中の下顎運動を連続的なデータとして収集し、AIで解析することで、睡眠時ブラキシズムを正確に特定して定量化する研究が行われている。
学術誌 Nature and Science of Sleepに発表された同研究は、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学の研究者らを中心に行われた。ここでは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が疑われる患者67名に対して、顎に貼り付ける小型のハードウェア(sunrise社製)による解析を行った。睡眠時ブラキシズム患者に特有となる下顎運動を同定し、リズミカルな咀嚼筋活動を自動識別するExtreme Gradient Boosting(XGB)マルチクラス分類器を学習させた。その結果、睡眠時ブラキシズムを筋電図から手作業でスコアリングする従来手法と比較して、デバイスを用いた下顎運動からの自動評価は良好な一致がみられていた。
非侵襲的なデバイスとAIによる技術革新によって、睡眠中における下顎運動の正確なデータ収集とその活用が可能となった。ブラキシズムをフォローアップすることで、睡眠時無呼吸や各種不眠症との関連をより正確に把握できるようになる可能性がある。睡眠時ブラキシズムを診断するユニークなAI手法によって疾患理解が深まり、治療最適化の進むことが期待される。
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