露通信大手VEON – 医学的診断AIに進出

ロシア通信大手のVEONは、携帯電話事業の「Beeline」ブランドで知られるが、このほど新たに医学的診断AI領域に進出することを明らかにした。背景となるのはBeelineが培ってきた画像解析AI技術で、行方不明者をドローン画像から特定するための「Lisa Alert’ project」に基づくもの。

VEONが23日明らかにしたところによると、医学的診断AIへの本格進出に先立ち、ロシアのモスクワ国立第一医科大学(セチェノフ医科大学)とのパートナーシップを締結したという。両者は今後、ニューラルネットワークのパターンマッチングアルゴリズムを用い、MRI画像分析と病理診断において、臨床的有効性の高いAIシステムの構築を目指す。具体的な対象疾患分野として股関節と腎などを挙げており、組織学的アプローチをコアとした「臨床医向け自動診断AI」の提供を計画する。

Beeline CEOであるAleksandr Torbakhov氏は「我々が携帯電話事業者として開発してきた技術は、今や接続性の議論を遥かに超え、個人がより長く、より健康的な生活を送るためのアプリケーションを包含している」と述べた上で、「BeelineのAI技術を医学的診断に活用することは、携帯電話事業者がこの重要な分野においても貢献できることを示すものであり、セチェノフ医科大学との取り組みに参加できることを誇りに思う」とする。

医療AIの萌芽とヘルスケア市場の巨大性を踏まえ、異業種事業者による領域参入も加速している。市民が技術の恩恵を享受する観点からは、新たなビジネス創出が進むことは好ましい。日本国内においても通信事業者や化粧品製造販売業者、旅行代理店業者などの参入が観察されており、今後の展開にも大きな期待を持って見守りたい。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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