前立腺がんの病理診断では、グリソンスコア(グリソングレード)による悪性度の評価が歴史的に続けられてきた。その評価法の限界は様々に指摘されてきたが、最も信頼性の高いツールとしての位置づけはほぼ不変である。評価者によって等級付けと定量化がばらつくという限界を克服するために、近年は病理医を支援するAIプラットフォームの開発が盛んとなり、泌尿器科におけるAI利用の重点領域とも言える。米ウィスコンシン大学マディソン校の研究グループから、新たなAI支援病理診断プラットフォームに関する研究が発表されている。
学術誌 JAMA Network Openに収載された同研究では、589人の男性から採取された1,000枚の前立腺がん病理スライド画像が解析された。3名の泌尿器科領域専門の病理医がスライドを手作業でチェックし、AIプラットフォームの支援下と比較された。その結果、AIシステムのスライドレベルでの悪性度判定は病理医の診断と「ほぼ完全な一致」がみられた。さらに、AI支援によってグレーディングと定量化の精度は、手作業の84%からAI支援で90.1%に向上していた。
研究チームによると「従来の研究で使用されてきたAIシステムやアルゴリズムは、病理医の臨床業務に影響を与える可能性の検証が十分ではなかった」として、本研究では病理医支援AIの効果検証が重ねられた。AI支援による診断精度の改善が今後のスタンダードとなり、前立腺がん患者のリスク層別化や治療方針策定に大きな影響を与える時代がさらに近づいていることを、本研究は実感させる。
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