鎮痛に電気刺激を利用することは古くから取り組まれてきた。経皮的末梢神経電気刺激(TENS)は、急性から慢性まで鎮痛効果をもつ医療技術として採用されている。その効能効果は見解が分かれるが、電気生理学とAI技術の発展が期待されている分野である。
米NeuroMetrix社はウェアラブル機器開発のヘルスケア企業だが、同社のQuellという下肢に装着するウェアラブル電気刺激装置が、各種疼痛への効能効果でFDAの認可を受けている。Medical Design & Outsourcingのインタビューでは、大規模なユーザーデータに機械学習を適用し、疼痛部位・疼痛の感度・年齢・性別・体重・肌の状態・基礎疾患・気象などの条件に最適な電気刺激のエネルギー量や頻度を調整する計画があるという。
高齢化に伴ってコントロールの難しい疼痛の例は増加しており、多種多量の鎮痛薬が処方されているにも関わらず有効な結果の得られていないケースも少なくない。鎮痛という個別性が高く経験的な医療の領域に、鎮痛薬以外の安全な技術がAIにより発展するのは歓迎すべきだ。日本理学療法学会誌に収載された、女性の月経痛にTENSの効果を検証した日本国内の報告など、その応用範囲も興味深いところである。