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AIは人類と尿路結石との戦いを終結させるか?

古代エジプトのミイラから腎結石と膀胱結石が見つかり、アイザック・ニュートンの晩年は膀胱結石に悩まされた。人類の歴史は常に尿路結石との戦いだったとするのは過言だろうか。突然の激しい痛みの発作から、果ては致命的な尿路感染症まで。良性疾患の分類でありながら、現代の泌尿器科専門医でも手ごわいと感じるのが尿路結石症である。

ブラジルの泌尿器科学術誌Int Braz J Urologyには、人工ニューラルネットワークを利用し、腎臓結石に対する体外衝撃波砕石術(ESWL)の治療成功率の予測精度を約99%に高めたとする研究成果が報告された。ESWLは体外から打ち込んだ衝撃波により体内で結石を砕き、患者の負担が比較的少ない治療だが、結石のサイズや場所など様々な条件で成功率が大きく変動する。内視鏡のような負担がやや強い結石治療の選択肢と比較する際に、ESWLの成功率をAIで高精度に予測することの価値がある。

Curr Opin Urologyに収載された論文では、尿路結石症に関するビッグデータとAI活用が未だ少ないことを指摘している。民間と公的な資本の間に意志の食い違い、すなわち尿路結石症への取り組みひとつでも様々な利害関係が調整されていないというのである。尿路結石は人類共通の敵のはずだが、その戦いの終結にはまだまだAIの活用の余地がありそうだ。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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