古代エジプトのミイラから腎結石と膀胱結石が見つかり、アイザック・ニュートンの晩年は膀胱結石に悩まされた。人類の歴史は常に尿路結石との戦いだったとするのは過言だろうか。突然の激しい痛みの発作から、果ては致命的な尿路感染症まで。良性疾患の分類でありながら、現代の泌尿器科専門医でも手ごわいと感じるのが尿路結石症である。
ブラジルの泌尿器科学術誌Int Braz J Urologyには、人工ニューラルネットワークを利用し、腎臓結石に対する体外衝撃波砕石術(ESWL)の治療成功率の予測精度を約99%に高めたとする研究成果が報告された。ESWLは体外から打ち込んだ衝撃波により体内で結石を砕き、患者の負担が比較的少ない治療だが、結石のサイズや場所など様々な条件で成功率が大きく変動する。内視鏡のような負担がやや強い結石治療の選択肢と比較する際に、ESWLの成功率をAIで高精度に予測することの価値がある。
Curr Opin Urologyに収載された論文では、尿路結石症に関するビッグデータとAI活用が未だ少ないことを指摘している。民間と公的な資本の間に意志の食い違い、すなわち尿路結石症への取り組みひとつでも様々な利害関係が調整されていないというのである。尿路結石は人類共通の敵のはずだが、その戦いの終結にはまだまだAIの活用の余地がありそうだ。