FemTech(フェムテック)が女性のほてりをクールダウン

女性(Female)の健康課題を解決する技術(Technology)を意味する『FemTech(フェムテック)』が注目を集めている。Apple Watchが参入する生理・月経周期トラッキング(過去記事)もひとつのFemTechと言える。例えば、閉経年齢前後の女性が抱える、不快なほてり・抑うつなどいわゆる更年期症状は健康課題とされて久しい。医学的根拠が不明にもかかわらず、更年期症状に効果を謳った磁気クリップがベストセラーとなってしまったことは、世界人口の半分に関わる問題に対して、解決法が未だに不十分な証明でもある。

Financial Timesから派生したメディアSiftedでは、FemTechの世界的な潮流を紹介している。新興企業と投資家が参入を続ける米国では、『Genneva』による更年期遠隔医療サービスの開始や、アンチエイジングに取り組むスタートアップ『Menopause.ai』の買収劇など、動きが盛んである。欧州でも追随する動きが見られている。例えば、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗症状の総称)を緩和する冷却装置が次々に開発されており、イギリス発のスタートアップではリストバンド型の『Grace Cooling』や、携帯できる石型の『PEBL』が話題となった。フランス発ではまくら型の『MOONA』もユニークである。

物理的な機器以外では、スペイン発のアプリ『B-wom』が、女性一人ひとりにパーソナライズされた健康指導を提供し、更年期に関するコンテンツを充実させている。極め付けとしては、イスラエル発のスタートアップ、XRHealthが提供する『Luna』によるVR体験「雪に覆われた風景」が更年期症状を軽減する認知行動療法としての可能性を示している。手始めのごく小規模な臨床試験ではあるが、顔面の紅潮と寝汗を50%減らしたと同社は発表している。これらの日々生まれ続けているFemTechが、大規模な臨床試験を越えたとき、更年期症状を本当にクールダウンする革新的な医療技術として世界の半分を席巻するかもしれない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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