韓国における自殺者数の増加は、深刻な社会問題となっている。OECD加盟国の中でも自殺率は最も高く、1日あたり36人が自分の命を奪っている計算となる(参照論文)。ソウルに所在する国立精神保健センターの研究チームは、自殺願望のある人々から、実際に行動に移してしまうリスクが高い者を識別する機械学習アルゴリズムを構築した。
オープンアクセスジャーナルPsychiatry Investigationに掲載されたチームの論文によると、19歳以上に対して施行された「国民健康栄養調査」の対象者35116名のうち、自殺願望のみられた5773名のデータからアルゴリズムを構築したという。学習データでは、1324名が実際に自殺目的の行動を行っており、各種リスク因子からこのハイリスク者を識別しようとした。チームの予測モデルでは、学習データと切り離したテストデータにおいても、AUCが0.947(正確性は88.9%)と非常に高い精度を示したという。
リスク因子からハイリスク者を自動識別することは、早期介入によるいわゆる「ハイリスクアプローチ」を効果的に実現し得るもので、システムの普及による社会的インパクトは非常に大きい。以前紹介した、スマートスピーカーによる自殺ハイリスク者のスクリーニングシステムも参照して頂きたい(過去記事)。