稀代の実業家のひとりイーロン・マスクが2019年7月に発表した、脳とコンピュータを接続する新システムと企業Neuralinkは世界中に衝撃を与えた(過去記事)。同様の構想でBrain-Computer Interface(BCI)技術を進める研究が多方面から打ち出されてきた。成果のひとつが米国スタンフォード大、および英国のフランシスクリック研究所とユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの共同研究チームから学術誌Science Advancesに発表された。
ScienceDailyが紹介する同研究は、人間の毛髪の15分の1にまで細められたマイクロワイヤー電極を脳内に設置し、脳の電気活動を受診するだけでなく双方向性に電気信号を送ることを可能とする。マウスでは数百本、大型哺乳類では10万本以上まで、動物の大きさに応じて拡張できる設計で、将来的なヒトでの実用の可能性を秘める。脳を電気制御する理論が確立することで、麻痺・感覚障害・治療抵抗性の精神神経疾患によって苦しむ患者に福音となるかもしれない。
同研究は著者のひとりMatthew Angle氏によって創設されたParadromics社での実装化が進められている。脳内への電極埋め込みというコンセプト自体は以前からあった。しかし、課題であった3次元空間の複雑な層状に分布する多数のニューロンの活動を記録するために、極細ワイヤを任意の3次元形状に配置するという解決策を同研究は示した。開発競争が盛り上がることで、ヒトでの実用化がすぐそこまで近づいたことを感じさせられる。