COVID-19治療薬の開発競争は熾烈を極めているが、ゼロベースでの創薬だけではなく、既存薬の利用による効果検討も多面的に進んでいる。既存薬は副作用情報が十分にあるため、より安全な運用が可能であること、長大な臨床試験を大幅に省略できることでスムーズな導入を実現できることなどのメリットがある。このほどシンガポールの研究チームは「複数の抗ウイルス薬を組み合わせることでより高い治療効果を望める」というAI研究の成果を公表した。
The Straits Timesが先週報じたところによると、AIプラットフォームを利用したこの新しい研究では、エボラ出血熱治療薬として知られるレムデシビルに、HIV感染症の治療薬であるリトナビル・ロピナビルを組み合わせることで、レムデシビル単独治療と比べて約6.5倍の治療効果を望める可能性を示したという。
米国では先月、重症のCOVID-19患者を対象としてレムデシビルの緊急利用が承認されるなど、既存薬の利用は各国で急速に進む。既存薬を巡る新しい知見の集積は、最も現実的で効率的なCOVID-19治療法確立へのアプローチとも捉えられており、まさに今科学コミュニティの力が試されようとしている。