診療時間外の文書化や膨大な診療録のレビューは、臨床医の燃え尽き症候群を助長する因子である。米マサチューセッツ州ニュートンに本拠を置くHealth Vectorは、診療中の会話をリアルタイムに書き起こすAIアプリを提供している。
Health Vector Clinical Transcriptionは、PC・スマートフォンで利用できるAIアプリで、診療中の会話へのリアルタイムトランスクリプション機能を持つほか、文書各部における臨床コンテンツを自動的にコード化することができる。生成されたトランスクリプトは、診療録にそのまま利用できるほか、患者ポータルから個別メッセージの送信、ケーススタディとしての医療者間共有、医療費請求、などへの活用が可能となる。同アプリは電子カルテシステムと既存の臨床ワークフローへの統合を前提とした設計がなされており、医師は診療中にメモを書き留めることなく、患者の話に注意を向けることができる。
Health Vectorは2017年に設立され、一貫して医師・患者サポートを目指したソリューションの提供を続ける。診断および治療へのAI利用は革新的な成果として大衆の目を集めやすいが、現存する医療提供体制を最適化する技術利用は、一見地味でありながら医療者の負担軽減・医療費削減の観点から直接的な効果が得られやすい。また同時に、臨床現場の特殊性からワークフローの各所に前時代的な手法が引き継がれているため、改善余地も多く新たなプレイヤーの参入が常に求められている。