ハーバード大学の研究チームは、マウスの健康生存期間を推定するAIシステムを構築した。これはヒトにおける「医療的介入がどの程度健康寿命延伸に影響するか」を明らかにするための基礎的研究となるため、大きな注目を集めている。
NeuralはNature Communicationsに収載されたチームの研究論文を紹介している。ハーバードメディカルスクールが主導した本研究では、マウスにおけるフレイル(frailty: 「高齢者の虚弱」を指すが、医学用語としての適訳は見つからず、日本老年医学会は現在「フレイル」との呼称を提唱している)を一生のうちに追跡した最初の研究だという。特定の薬剤や食事が老化プロセスを遅らせるかを確認するためには、マウスであっても通常は最大3年程度が必要となる。研究チームは60匹のマウスが死ぬまでを追跡し、歩行能力や背中の屈曲、聴力と言った非侵襲的検査を継続的に行い、フレイルに基づいてマウスの生物学的年齢を検出するモデルと、マウスの寿命そのものを予測するモデルを構築した。これらにより、2ヶ月以内の観察で各アウトカムの高精度な推定が可能となるため、医療的介入がどう機能するかをテストするツールとして利用でき、研究スピードの加速が期待できる。
ヒトの健康に影響を与える因子は、実験室におけるマウスと異なりはるかに多様であるため、即時的な応用はできない。一方で研究者らは、本研究をベースに「ヒトの健康スパンと寿命延伸に寄与する医学的介入」を迅速かつ正確に予測できるシステムの開発を見据えている。