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デジタル聴診器が家庭に普及するのに必要なこと

日本においてもオンライン診療恒常化への動きが本格化するなど、新型コロナウイルス感染症を発端とする技術革新やそれに伴う制度変更の余波は続く。デジタル聴診器を手がける米ThinkLabsもまた、パンデミックの最中での需要急増による事業拡大を経験したヘルステック企業の1つだ。

新型コロナウイルス感染症への対応において、医療者は患者との不必要な接触を避ける必要がある。これは防護服着用状態での聴診器使用や、部屋の外から心音・呼吸音を聴取できる機能などといった新たな需要を種々生み出し、同社は迅速な対応によって成果を示してきた。Healthcare IT Newsの取材で、ThinkLabs創設者のClive Smith氏は「COVID-19を燃料とするイノベーションは多くあったとしても、実際の医療機器は比較的単純なものばかりだ。病室で最もインテリジェントなデバイスは、実は患者のスマートフォンだろう」とした上で、一般市場にはIoT機器やウェアラブル製品が溢れているが、ノイズの増加は適切な情報の選択を難しくする面も指摘する。

AIの活用は多量のデータからの効率的な解釈・知見抽出を助けるが、現時点では専門家のアドバイスが欠かせない。ThinkLabsのデジタル聴診器は既に臨床現場での活用が進むが、明確な数値に集約される血圧計やパルスオキシメーターなどと異なり、特に遠隔診療においては理解を困難にする複雑なシグナルが生成される。Smith氏は「家庭に聴診器が備わる未来は近い。一方で、やはり常に必要とされるのは専門家がデータを解釈するというプロセスだ」と話す。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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