日本においてもオンライン診療恒常化への動きが本格化するなど、新型コロナウイルス感染症を発端とする技術革新やそれに伴う制度変更の余波は続く。デジタル聴診器を手がける米ThinkLabsもまた、パンデミックの最中での需要急増による事業拡大を経験したヘルステック企業の1つだ。
新型コロナウイルス感染症への対応において、医療者は患者との不必要な接触を避ける必要がある。これは防護服着用状態での聴診器使用や、部屋の外から心音・呼吸音を聴取できる機能などといった新たな需要を種々生み出し、同社は迅速な対応によって成果を示してきた。Healthcare IT Newsの取材で、ThinkLabs創設者のClive Smith氏は「COVID-19を燃料とするイノベーションは多くあったとしても、実際の医療機器は比較的単純なものばかりだ。病室で最もインテリジェントなデバイスは、実は患者のスマートフォンだろう」とした上で、一般市場にはIoT機器やウェアラブル製品が溢れているが、ノイズの増加は適切な情報の選択を難しくする面も指摘する。
AIの活用は多量のデータからの効率的な解釈・知見抽出を助けるが、現時点では専門家のアドバイスが欠かせない。ThinkLabsのデジタル聴診器は既に臨床現場での活用が進むが、明確な数値に集約される血圧計やパルスオキシメーターなどと異なり、特に遠隔診療においては理解を困難にする複雑なシグナルが生成される。Smith氏は「家庭に聴診器が備わる未来は近い。一方で、やはり常に必要とされるのは専門家がデータを解釈するというプロセスだ」と話す。