医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例「AI-RADS」米ダートマス大が取り組む放射線科医のAI教育

「AI-RADS」米ダートマス大が取り組む放射線科医のAI教育

放射線医学におけるAIの台頭に対して、将来の放射線科医の教育はどう取り組むべきか。米ダートマス大学医学部の放射線科では「AI-RADS」と題した放射線医学におけるAI導入カリキュラムが研修医に提供されている。このほど、AI-RADSの成果が学術誌 Academic Radiologyに発表された。

同カリキュラムでは基本統計に関する知識を前提とするものの、多くのレジデントがAI関連のバックグラウンドを持たず研修に入っている。まずはアルゴリズムの身近な例(スパムフィルタ・映画コンテンツのオススメ表示)の紹介を導入としながら、画像技術を理解するためのピクセル処理に伴う基礎的な数学など、ベースとなる多彩な学習領域をそのカリキュラムに組み込む。講義で扱ったアルゴリズムは、その後に論文の抄読会(ジャーナル・クラブ)で補強されるが、論文を学ぶ上で必要な技術的解説についてはガイドが作成されている。講義資料に対する信頼度評価と、ジャーナル・クラブにおける出席者の準備状況、および題材とした論文の適切性がアンケート評価された。

AI-RADSに対する放射線科研修医からの総合的な満足度は、9.8/10という高スコアが得られた。出席者はAI関連の学術誌を読むことに対する自信が有意に増加するとともに、AIに関する基礎概念の理解も向上したという結果が示されている。ダートマス大では、同コースの成功によって、放射線科研修医教育にAIを含めるモデルを提示することができたと評価している。研究グループは「今後の放射線科医にとって、AIに対する習熟は必要不可欠なスキル」と主張し、教育プログラムを持続可能なオンライン講座として確立することに取り組んでいる。初回の講義がYouTubeにアップロードされているため参照いただきたい。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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