特に米国における注射薬物使用者(PWID)は、HIVやB型・C型肝炎ウイルスへの感染、薬物過剰摂取による死亡(ODD)など、多大な健康リスクを抱えている。このPWIDコミュニティの時空間識別は、薬物使用に伴う死亡を低減するための公衆衛生学的介入プログラムの策定に欠かせない。米疾病予防管理センター(CDC)などの研究チームは、このPWIDとODDを正確に捕捉する機械学習モデルを開発した。
査読つきオープンアクセスジャーナルであるPLoS Oneに7日掲載されたチームの研究論文によると、Dynamic Overdose Vulnerability Estimator(DOVE)と呼ばれるこの新しいモデルでは、Googleのウェブ検索ボリュームを活用し、米国内におけるODDの評価と時空間マッピングを達成しているという。2004年から2017年の間に報告されたODD率と薬物関連の用語検索に強い関連性があることを確認した研究チームは、機械学習モデル(Extremely Random Forest)を用い、検索傾向から州および郡レベルでのODD推定に取り組んできた。DOVEは2017年に報告された70,237のODDに対して66,463と、実に94.48%の推定に成功している。
DOVEによるODDの時空間マッピングは、PWID間における潜在的な死亡傾向をタイムリーに特定できるもので、最も脆弱なコミュニティに対する効果的な介入政策の立案を後押しする。米国における社会問題の是正に、AIアプローチが活用された好例と言える。