生活の大部分を支える「住宅」が及ぼす健康被害は深刻なもので、住宅コード違反に基づく種々の健康被害は米国においても大きな問題となっている。化学物質、傾斜、換気不良、異常室温、土壌・水質汚染など、基準を満たさない劣悪な住環境が多様な疾患の引き金となる。米ハーバード大学ケネディスクールの研究チームは、健康被害のリスクがある住宅を特定する機械学習モデルを開発している。
Public Health Management & Practiceからこのほど公表されたチームの研究論文によると、この研究はボストン近郊となるマサチューセッツ州チェルシーで行われた。このエリアは住民背景が多様で、人口密度が高く、低所得であることが特徴となる。1,611の検査済み物件データを利用し、「住宅コード違反」および「健康被害の可能性」を識別する機械学習モデルを構築した。生成したモデルを市内全ての住宅に適用したところ、54%に住宅コード違反を認め、そのうち85%は高度の健康被害リスクを含むことを明らかにしている。
著者らは「都市データと機械学習技術により、追加検査リソースを必要とせず、住環境に伴う健康被害リスクを推定することができる」としており、住宅法の施行をより効果的かつ効率的とすることを通し、公衆衛生上の懸念を払拭できる可能性がある点を強調する。