英国University College London(UCL)の研究チームは、独自開発のAIツール「SuStaIn(Subtype and Stage Inference)」を利用し、多発性硬化症における3つの新しいサブタイプを特定した。多発性硬化症は世界で280万人以上、英国では13万人以上の患者がおり、MRI画像所見や症状から、治療法選択とその導入タイミングが個別に判断されてきた。チームは「特定の治療法に鋭敏に反応するサブタイプがあるか」に強い関心を持ち、研究を進めている。
Nature Communicationsから6日公開されたチームの研究論文によると、SuStaInを利用し、6,322人の頭部MRI画像を解析したという。SuStaInはMRI画像の初期変化に基づき、これまで明らかにされてこなかった3つのサブタイプ(皮質型・正常白質型・病変型)を特定した。また、各サブタイプに分類される患者が「それぞれの治療にどのように反応したか」を遡及的に調べたところ、サブタイプ間で各治療への反応性と、時間経過に伴う障害の蓄積に有意な差があることを確認した。
著者らは「さらなる臨床研究は必ず必要だが、個別最適治療を実現し得る画期的なステップだ」として、本研究成果の重要性を強調する。チームは現在、画像変化のみに焦点を当てているが、他の臨床情報を含めたアプローチへの拡張を検討しており、疾患特異的な臨床ビッグデータとAIがもたらす成果への期待は非常に大きい。
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