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リハへのAI活用 – 脳卒中患者における下肢装具の必要性を予測

脳卒中に伴う片麻痺への装具療法は、歩行の改善に明確な効果がある。下肢装具のうち、特に短下肢装具(AFO)は下腿部から足底までを覆う構造を取り、足関節の動きを制限することで効果発現を期待するものだ。韓国・嶺南大学の研究チームは、脳卒中発症後早期での「後にAFOが必要となる可能性を予測する機械学習モデル」を構築した。

チームが19日、Scientific Reportsから公表した研究論文によると、474名の脳卒中患者における臨床データを利用し、この機械学習モデルを導いたという。6ヶ月後の歩行におけるAFOの必要性は足首背屈筋のMRCスコアに従って分類しており、スコア3未満の患者は必要あり、3以上で必要なしとしている。研究チームは、患者がリハビリテーションユニットに移されるタイミング(発症後平均16.2日)での臨床データ(年齢・性別・脳卒中種別・運動誘発電位データ・Brunnstrom分類など)から、このMRCスコア低値を予測するモデルを構築した。結果、ディープニューラルネットワークでAUC 0.887、ランダムフォレストとロジスティック回帰でそれぞれ0.855と0.845と、各モデルは比較的高精度な予測能を示していた。

研究チームは「機械学習アルゴリズム、特にディープニューラルネットワークが回復期脳卒中患者におけるAFOの必要性予測に役立つことを示した」とし、成果の重要性を強調している。リハビリテーション領域におけるAI活用研究は近年増加傾向にある。近傍研究で先行の乏しいものとしては、種々ある下肢装具のうち、患者背景および臨床データからどの装具を選択することで機能予後が良好となるか、臨床的意思決定を支援するAIモデルの構築などが考えられる。個別最適化装具をデータドリブンに設計することも、高齢化の進展に伴う需要の増大が見込まれるため、興味深いシーズとなり得るだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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