原因と症状パターン、緩和と増悪など、疼痛を巡る一連の現象を一元的に説明し得る理論は未だ得られていない。多くの研究が疼痛管理を目的とした標的分子を追っているが、数理モデルを用いた疼痛の病因探索や作用メカニズムの探求は非常に限られている。スウェーデンのチャルマース工科大学とヨーテボリ大学などの研究チームは、疼痛への数理モデルアプローチについての系統的レビューを公開した。
Pain Medicineから29日公開されたチームの研究論文によると、調査対象となったのはScience DirectとPubMedの両論文データベースで、2020年以前の560報が関連論文としてピックアップされた。このうち、31報については「痛みを直接数理モデルで解釈」しようとする論文としてレビュー対象となっている。結果、ほとんどの対象論文が既存の機械学習アルゴリズムを用いることで「疼痛の有無」を識別しようとすることに焦点を当てたもので、診断や治療を念頭に置いた疼痛の性質分析や量的評価に寄ったものはほぼ確認されていないとする。
数理モデルの利用は、疼痛の発生機序となる仮説的メカニズムに対して実データによる実証試験も可能とすることから、疼痛の現象理解を強化・促進する可能性が高い。疼痛の診断・治療・予防におけるブレイクスルーに資するアプローチとして、今後の各方面からの取り組みが期待される。
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