がんの手術前に行う化学療法「ネオアジュバント療法」がどれくらい奏功したか、切除検体の病理標本から精査される。AI病理診断技術を開発する米ボストン拠点のPathAI社は、ネオアジュバント療法の効果を測るために、病理学的評価項目「PathR」を自動算出するアルゴリズムを展開している。
PathAIのニュースリリースによると、アルゴリズムについての研究成果が6月4日~8日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された(抄録参照)。同研究は非小細胞肺がん患者に分子標的薬アテゾリズマブ(販売名テセントリク)のネオアジュバント療法を行う臨床試験LCMC3において、PathAIのアルゴリズムで病理標本から「腫瘍領域および残存した生存腫瘍」の定量化を行った。従来は病理医が標本から手作業で算出していた評価項目を機械学習ツールによって自動化し、特に生存腫瘍が10%以下である「MPR: major PathR」の評価において、手作業の評価と強い一致(AUROC = 0.975)を示した。また、手作業で算出したMPRは手術後の患者の無病生存期間(DFS)や全生存期間(OS)の改善と有意な相関を認めなかったが、AIで算出したMPRでは有意な相関を示すことができた。
この研究成果では、機械学習によって自動化・定量化された病理診断が、手作業の評価と同等の精度を有することを示唆した。さらに評価項目MPRのAIによる評価が、DFSやOSを予測する代替評価指標となる可能性も示している。いままさに勃興しようとするAI病理診断の1つとしてPathAIの動向に注目したい。
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