糖尿病患者は非糖尿病患者に比して、有意に高い年齢調整死亡率を有する。これは年齢に関わらず、糖尿病に罹患していること自体が死亡リスクを高めることを意味するが、どのような患者背景であることがどの程度の死亡リスクとなるか、仔細に検証した研究成果は限られていた。香港心臓血管生理学研究所の研究チームは、マルチパラメトリックアプローチによる「香港における糖尿病患者の全死因死亡予測モデル」の開発に取り組んでいる。
BMJ Open Diabetes Research & Careからこのほど公開された研究論文によると、2009年の1年間において、香港特定地域に所在する複数の公立病院に通院した2型糖尿病患者を対象にしたという。主要なアウトカムは「全死因による死亡」とした上で、まずCox比例ハザードモデルによって死亡率に対する予測因子を探索し、次にこれらを用いて機械学習モデルによる死亡予測モデルを構築した。評価は5分割交差検証法を用いている。
結果、273,678人の患者が研究対象となり、その後の追跡調査によって91,155人が死亡していた。死亡率への予測因子として高い説明力を示したのは、年齢、性別(男性であること)、ベースラインの併存疾患などの基本属性の他、貧血、好中球対リンパ球比の平均値、高密度リポタンパク質、総コレステロール、トリグリセリド、HbA1cおよび空腹時血糖値などであった。これらのパラメータを組み込むことで、0.73程度のc統計量を持つ従来のスコアベースリスク予測モデルに比して、0.86程度とより高い予測精度を示す機械学習モデルの構築に成功している。
研究成果は、異なるドメインからの変数を組み込んだマルチパラメトリックアプローチ、および機械学習モデルによって2型糖尿病患者の全死因死亡を正確に予測し得ることを示している。これは患者個別評価と高リスク者トリアージの観点から重要な研究成果であり、実臨床利用を想定したスケール化や、他国における追試の進むことが期待されている。
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