医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例健康への社会的決定要因を評価するAI手法

健康への社会的決定要因を評価するAI手法

健康への社会的リスク因子(SRFs: social risk factors)が注目されている。そのリスク評価へのAI手法適用についても多方面から模索が続いているが、米ノースカロライナ州拠点の非営利研究機関 RTI Internationalのグループによる研究成果の一例を紹介する。

医療情報管理システムの非営利団体「HIMSS」が運営するメディア Healthcare IT Newsでは、今年8月9〜13日に開催される国際会議 HIMSS21で、RTI Internationalの研究グループが発表予定のセッションを紹介している(抄録参照)。同グループは「機械学習を用いて、国勢調査レベルでの平均寿命の差異をSRFsから理解できる」とする研究成果を示す。同成果では、平均余命や乳児死亡率といった集団の健康指標に対し、SRFsによってその73~99%を説明可能であることを明らかにしている。

失業・教育・住宅・食糧・交通手段といった要因によって、人々が適切な治療を受けたり治療計画に従うことをどれだけ困難とするか、近年の医療システムの中でようやくその事実が受け入れられ始めている。個人の努力ではコントロールの難しい社会的リスクに対して、SRFsを医療保険などの支払いシステムに組み込むことも検討されつつあり、リスク因子の探索とその影響を評価する研究成果には大きな価値がある。AIの活用によって、健康における社会的不平等をもたらす要因の解明が進み、その対策法を明らかにできるか、注目の領域と言える。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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