健康への社会的リスク因子(SRFs: social risk factors)が注目されている。そのリスク評価へのAI手法適用についても多方面から模索が続いているが、米ノースカロライナ州拠点の非営利研究機関 RTI Internationalのグループによる研究成果の一例を紹介する。
医療情報管理システムの非営利団体「HIMSS」が運営するメディア Healthcare IT Newsでは、今年8月9〜13日に開催される国際会議 HIMSS21で、RTI Internationalの研究グループが発表予定のセッションを紹介している(抄録参照)。同グループは「機械学習を用いて、国勢調査レベルでの平均寿命の差異をSRFsから理解できる」とする研究成果を示す。同成果では、平均余命や乳児死亡率といった集団の健康指標に対し、SRFsによってその73~99%を説明可能であることを明らかにしている。
失業・教育・住宅・食糧・交通手段といった要因によって、人々が適切な治療を受けたり治療計画に従うことをどれだけ困難とするか、近年の医療システムの中でようやくその事実が受け入れられ始めている。個人の努力ではコントロールの難しい社会的リスクに対して、SRFsを医療保険などの支払いシステムに組み込むことも検討されつつあり、リスク因子の探索とその影響を評価する研究成果には大きな価値がある。AIの活用によって、健康における社会的不平等をもたらす要因の解明が進み、その対策法を明らかにできるか、注目の領域と言える。
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