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テクノロジーへの不満が医療者の倦怠感を助長する

医療の効率化と質的向上を目指し、AIを含むあらゆるテクノロジーが臨床現場に取り入れられているが、医療従事者が「週の半分はテクノロジーに対する不満を自覚し、これが倦怠感に直結」している事実がスタンフォード大学の研究チームによって明らかにされた。

Journal of Medical Internet Researchから6日公開された研究論文は、米ミシガン州に所在する31の病院における医療従事者対象の観察研究成果をまとめたもの。安全性やコミュニケーション、運用の信頼性、エンゲージメントなどの観点から、ワークライフインテグレーションと精神的な倦怠感を測定した。多施設データとしての階層構造を考慮した混合効果モデルを利用し、テクノロジーに対する不満と精神的倦怠感の関連性等を解析している。結果、15,505人の有効回答のうち、5,065人(32.7%)が「少なくとも週に3~5日はテクノロジーに対する欲求不満を経験する」としており、他の交絡因子を調整しても「テクノロジーに対する不満の増加が、精神的倦怠感を有意に強めている」事実が明らかにされた。

研究チームは「エンドユーザーの利用状況を適切に考慮していないシステム設計や、十分なトレーニング機会の与えられていない新技術に対して、医療従事者はフラストレーションを感じやすい」とした上で、医療従事者の不満を増加させないテクノロジー開発方針とその導入方法を取ることで、医療者の燃え尽き症候群を抑制する効果的な施策になり得る事実を指摘する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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