EHRコホートを用いた肺がん予後予測

電子健康記録(EHR)は、紙カルテを電子記録に置き換えたのみの一般的な電子カルテ(EMR)とは異なり、個人医療情報を医療機関横断的に収集・共有されるもので、2000年頃から欧米各国において実現されてきた。米ハーバード大学などの研究チームは、このEHRデータから肺がんコホートを設定し、高精度な予後予測モデルの生成が可能であることを示した。

JAMA Network Openに掲載されたチームの研究論文によると、1998年から2018年にかけてハーバード大学の関連病院を受診し、少なくとも1つの肺がん診断コードを持つ7.6万人以上のEHRデータに基づく成果をまとめた。機械学習アルゴリズムと自然言語処理ツールを利用し、構造化データおよび非構造化データから臨床情報を抽出した。これらから肺がん分類モデルと予後予測モデルを構築したところ、前者で94.4%の陽性的中率、後者については1~3年後予測でAUCはそれぞれ0.814を上回り、各モデルは優れたパフォーマンスを示していた。

研究成果は「EHRに基づく肺がんコホートは、大規模な縦断的臨床データから知見を抽出するための費用対効果に優れたアプローチとなる可能性が高い」ことを示しており、機械学習アルゴリズムの構築を前提とした疾患特異的なEHRデータ活用は、今後急速に拡大することが見込まれる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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