2050年までに世界50億人が近視となることが推定され、そのうちの20%は「近視性黄斑変性症」のリスクを伴う強度近視であるという(参照論文)。強度近視は眼底網膜の菲薄化をきたし、裏面から侵入する異常血管の出血によって視力が低下する状態を近視性黄斑変性症と呼ぶ。出血の程度によって失明リスクもあるため、近視の検出と管理は視力予後にとって重要である。
シンガポール国立大学などの研究チームは、網膜画像から近視性黄斑変性症と強度近視を識別する深層学習アルゴリズムを構築した。研究成果はThe Lancet Digital Healthから公開されている。研究チームは22万を超える網膜画像を複数のコホートデータベースから取得し、アルゴリズムのトレーニングと検証を行った。シンガポールのデータによってトレーニングと内部検証を経たアルゴリズムは、中国・台湾・インド・ロシア・英国においてもその妥当性を検証した。このアルゴリズムは、近視性黄斑変性症でAUC 0.969、強度近視で0.913と高い識別精度を示すとともに、眼科専門医6名との比較においても、両疾患の識別においてアルゴリズムは全員のパフォーマンスを有意に上回っていた。
研究チームは「深層学習アルゴリズムが、来たる大量近視時代の有用なスクリーニングツールとなり得る」ことを指摘し、医師の臨床的意思決定を支える主要な臨床サポートツールとしての発展に期待感を示している。
関連記事: