AIが識別する画像の微細な違いは、「ある特定の細胞の特徴」など、解釈困難な差であるためにその臨床利用も容易ではない。その課題克服のため、米テキサス大学サウスウェスタン医療センター(UTSW)の研究グループは、皮膚がんであるメラノーマにおいて「転移する可能性の高い細胞と低い細胞で視覚的に何が異なるか」をAI手法で明らかにする研究を行っている。
UTSWのニュースリリースによると、同研究は7人のメラノーマ患者の腫瘍サンプルから約12,000個の生きた細胞の動画を撮影し、約170万枚の画像を生成した。AIアルゴリズムによって画像から56種の数値特徴を引き出し、そこから転移性の高い細胞と低い細胞を識別するものを1つ特定した。この数値を操作することにより、転移リスクの高い細胞特性を誇張した人工的な画像を逆に生成した。その結果、細胞の突起物である仮足のわずかな延長および散乱光の増加が、転移性細胞の視覚的な特徴であることを示すことができた。研究成果はCell Systems誌に掲載されている。
研究の有用性を証明するため、研究グループは凍結保存していたヒトメラノーマ細胞を、研究成果に従って転移性を分類しマウスに移植した。その結果、転移性が高いと予測されていた細胞は容易に浸潤する腫瘍を形成し、一方で転移性が低いと予測される細胞は、ほとんどあるいはまったく浸潤しなかった。研究メンバーのDanuser博士は「がんやその他の疾患の重要な特徴をAIで識別することが可能になるかもしれない」と語り、研究発展に期待を寄せる。
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