「ビューティプレミアム(beauty premium)」と呼ばれる、身体的魅力と収入増の関連について多くの先行研究がある。しかし、外見の定義が主観的であることや、身長や体重など指標の測定誤差に課題があった。米アイオワ大学の研究者らは、全身の3Dスキャンデータに機械学習技術を適用して体型と世帯収入の頑健な統計学的関連を示した。
学術誌 PLOS Oneに掲載された同研究では、米国空軍が1998年から2000年にかけて実施したCAESARと呼ばれる調査プロジェクトのデータを用いた。データセットには全身のデジタル3Dスキャンなど各種身体測定値が含まれている。解析には、ディープラーニング手法のひとつグラフオートエンコーダが用いられた。結果、体型と世帯収入には有意な関連があり、さらにこれが男女で異なることを明らかにした。データ内の世帯年収の中央値7万ドルを基準にした場合、男性では身長が1cm増加すると世帯年収が約998ドル増加すると推定され、また女性の場合BMIが1減少すると世帯年収が約934ドル増加することが推定された。
これは、労働市場における身体的魅力のプレミアム効果が存在することをあらためて示すものであり、男女間でその効果の性質が異なるという従来の仮説をさらに補強する。著者らは、労働市場に関し(1)職場倫理・無差別研修を通じて差別意識を認識・改善する努力をすること、(2)ブラインド面接など採用・昇進プロセス全体でバイアスの侵入を最小化するメカニズムを奨励すること、を本研究の政策的含意としている。
関連記事: