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身体的魅力で収入が増加する「ビューティプレミアム」をAI研究が証明

「ビューティプレミアム(beauty premium)」と呼ばれる、身体的魅力と収入増の関連について多くの先行研究がある。しかし、外見の定義が主観的であることや、身長や体重など指標の測定誤差に課題があった。米アイオワ大学の研究者らは、全身の3Dスキャンデータに機械学習技術を適用して体型と世帯収入の頑健な統計学的関連を示した。

学術誌 PLOS Oneに掲載された同研究では、米国空軍が1998年から2000年にかけて実施したCAESARと呼ばれる調査プロジェクトのデータを用いた。データセットには全身のデジタル3Dスキャンなど各種身体測定値が含まれている。解析には、ディープラーニング手法のひとつグラフオートエンコーダが用いられた。結果、体型と世帯収入には有意な関連があり、さらにこれが男女で異なることを明らかにした。データ内の世帯年収の中央値7万ドルを基準にした場合、男性では身長が1cm増加すると世帯年収が約998ドル増加すると推定され、また女性の場合BMIが1減少すると世帯年収が約934ドル増加することが推定された。

これは、労働市場における身体的魅力のプレミアム効果が存在することをあらためて示すものであり、男女間でその効果の性質が異なるという従来の仮説をさらに補強する。著者らは、労働市場に関し(1)職場倫理・無差別研修を通じて差別意識を認識・改善する努力をすること、(2)ブラインド面接など採用・昇進プロセス全体でバイアスの侵入を最小化するメカニズムを奨励すること、を本研究の政策的含意としている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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