AIの臨床応用が進む中で、システム自体を生体内へ埋め込むには技術的な課題が残されている。独ドレスデン工科大学の研究チームは、生体適合性のある埋め込み型AIプラットフォームの開発に成功している。
ドレスデン工科大学のニュースリリースでは、学術誌 Science Advancesに掲載された同研究の成果を紹介している。チームはポリマー繊維を用い、人間の脳神経系に似た構造のネットワークを構築することで「ニューロモルフィックAI」の原理を実現した。ネットワークはペースメーカよりも省エネルギーで、生体からのわずかな信号変化も増幅可能という。その試験では、健康な心拍と3種の不整脈を88%の精度で識別することができた。
これまで成功していた生体適合部品は、個々のシナプスやセンサーなど単純な部品に限られていた。同研究は「複雑な分類タスクをリアルタイムに生体内で行う可能性」を示している。埋め込み型AIシステムの潜在的な需要は多岐にわたり、当該研究にみられた不整脈のほか、手術後の合併症をモニターし、スマートフォンを通じて医師・患者の双方に報告することなどが想定されている。